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A,Bの無帰還化
Non-feedback for A,B
 これまで、新型アンプの帰還を少しずつ減らして来ました。
その間に、入力インピーダンスも上がって来ていたことに気付きませんでした。
帰還がかかっていた頃に、新型アンプの入力インピーダンスを測ってみたところ、その値はRin//Rnf2となっていたことを覚えています。
帰還を減らした新型アンプの入力インピーダンス次第では、心配していた帯域幅の問題も解消し、一気に無帰還化に拍車がかかるばかりでなく、アッテネーターの1kΩ化も必要でなくなるわけです。

◆Rnf1/Rnf2の撤去
まず、Rnf1を撤去し、Rnf2のみの抵抗値を変えて、利得の変化を調べてみました。
結果は、表1の通りです。
Rnf2の値を20kΩ〜51Ω変化させて、利得の変化は0.5dBです。
Rnf1/Rnf2=510kΩのときに見えた暗黒抵抗Rx=78kΩは、Rnf1を撤去した状態では霧散してしまいました。
Rxとは何者だったのか、いまだ不明です。

表1:Rnf2と利得の関係(AのL側で測定 1kHz)
Rnf2(Ω) 利得(dB) 備考
20k 23.58  
 10k  23.92   
 5.1k 23.97 22.7dB
(Rnf1=510kΩ)
 3.3k  24.03  
51 24.08  
図1:A,Bから帰還抵抗Rnf1を取り払った無帰還化の基本回路
 
◆入力インピーダンス
Rnf1を撤去し、Rnf2を51Ωとして入力インピーダンスを測ってみました。
入力に半固定抵抗(500kΩのポテンショメーター)を入れたときに、入れないときの1/2になる抵抗値を測ると、表2の通りです。
何と、入力インピーダンスは110kΩもあります。
これならば、H,MH帯に関する限り、アッテネーターの出力抵抗Roを減らすために、その入力抵抗を3kΩ化し、また、1kΩ化も検討していることが無駄になります。
ただし、高帰還の中低域用新型アンプ2号にとっては、無駄ではないかも知れません。

表2:入力インピーダンスの測定結果
機種 チャンネル 入力インピーダンス
(Ω)
備考
A R 111k 1kHzにおいて、
利得が−6dBとなる
直列抵抗
L 113k
B R 124k
L 123k

◆大変だぁー(周波数特性)
入力インピーダンスが100kΩを超えるとなると、Rnf2はなし(51Ω)に出来るわけですから、さっそく、Rnf1を撤去し、Rnf2を51Ωとして周波数特性を測ってみました。
大変です。
帯域幅(利得が1/√2になる周波数)は200kHzを超えています。(図2)
これでは帯域幅が広がり過ぎです。
 
図2:Rnf1=∞(撤去)、Rnf2=51ΩのAのR側の周波数特性
これでは、帯域幅が広過ぎる!
 
そもそも、20〜30kHz以上には音楽信号はなく、あるのは雑音ですから、帯域幅はせいぜい、30〜50kHzくらいにしたいものです。
そこで、Rnf2を変えて帯域幅取ってみると、表3のようになります。

表3:Rnf2と帯域幅
機種 チャンネル Rnf2(Ω) 帯域幅(Hz)
A R 5.1k 19k
3.3k 26k
1.5k 49k

◆周波数特性(最終)
結局、Rnf2の最終値は1.5kΩとしました。
周波数特性の測定結果は、図3、図4の通りです。
 
 
図3:Aの周波数特性(経緯) 
一番上の線が今回のRnf1=∞、Rnf2=1.5kΩ
図4:Bの周波数特性(経緯) 
一番上の線が今回のRnf1=∞、Rnf2=1.5kΩ
 
◆諸特性
無帰還化で心配されるのは、ノイズや出力インピーダンス、直流出力電圧の増大です。
そこで、諸特性を取ってみました。
結果は表4、表5の通りです。
なお、Rnf1/Rnf2の変更と測定、ラック収納の順序は、A→Bで行っています。
この無帰還化による利得の増大は、前回より1.5dB程度ですが、その分ノイズや出力インピーダンスは増えています。

表4:Aの特性測定結果(Rnf1=∞、Rnf2:1.5kΩ、負荷抵抗 16Ω)
項目 チャンネル 単位 測定値 備考
利得(注1) R dB 24.1 およそ
1時間後に測定
L 24.1
ノイズ(注2、注3) R μV 91
L 94
直流出力電圧 (注2) R mV 1.9
L 0.8
出力インピーダンス R Ω 78.2
L 78.7
注1: 周波数 1kHz
注2: 入力端子にショート・ピンを挿入
注3: ACmV計:5Hz〜1MHz
注4: 出力 インピーダンスは、1kHz オン・オフ法による。
注5: Ta=25.3℃(エアコン使用) 

表5:Bの特性測定結果(Rnf1=∞、Rnf2:1.5kΩ、負荷抵抗 16Ω)
項目 チャンネル 単位 測定値 備考
利得(注1) R dB 24.1 およそ
1時間後に測定
L 24.2
ノイズ(注2、注3) R μV 240
L 245
直流出力電圧 (注2) R mV 2.2
L -1.3
出力インピーダンス R Ω 72.3
L 73.4

◆試聴結果(7月9日の夜)
世紀の大実験であるので、エアコンをつけて試聴しました。
前回と同様に聞いた曲をまとめると、表6のようになります。
結論から先の述べると、前日の昼間の試聴のような感動はありませんでしたが、これらの曲は「何度聞いても美しい」と思いました。

表6:昼間の試聴結果(気付いた点)
No 試聴番組 特記事項
 1 リーリャ・ジルベルシュティンのピアノ曲
フォルテで、ちょっと、ジャリジャリとした歪のようなものを感じた。
この曲で、以前からときどき、それを感じることがあるので、無帰還化と関係ないかも知れない。
◎ 
2 ラ・プティットバンド演奏会のピッコロ協奏曲
抜けのよさ。
3 アンドルー・マンゼ&リチャード・エガー リサイタル
バイオリンやチェンバロが繊細
4 コントラバス・フレンズ
弦の摩擦音が生々しい。
ピチカートが、ちょっと柔らかく感じた。(ブーミー感が出て来たのか?)
5 ライプチヒ弦楽四重奏団演奏会 ヒバリ(ハイドン)
弦楽器の音がよくなった。拍手音もいい。
6 ブラヴァデ・リコーダー四重奏団演奏会
新たな変化はなかった。
7 プロムス2011 ラスト・ナイト・コンサート バレー組曲「中国の不思議な役人」(バルトーク) BBC交響楽団 エドワード・ガードナー指揮
変化はない。
8 バッハ ブランデンブルク協奏曲 第5番
全楽器がはっきり分離して聞こえる。

◆まとめ
前々項で、FET10パラ低域用新型アンプ(FET10パラ・アンプ)の利得を30dBに上げたために、出力インピーダンスが5Ω近い値になっているためか、ところどころで「少しウーファーがブーミーになったかなぁー」と思うことがあります。
これは、今回のA,Bの無帰還化とは関係ないと思います。
次の課題は、FET10パラ・アンプの無帰還化と中低域用新型アンプ2号の帰還減らし3dBです。
A,Bの入力インピーダンスの例からすると、FET10パラ・アンプの入力インピーダンスも想像より十分大きいかもしれません。
問題は、中低域用新型アンプ2号の入力インピーダンスです。

なお、帯域幅を49kHzにしましたが、これでも広過ぎるのではないかと後悔しました。
別途、Rnf2=3.3kΩとし、帯域幅は26kHzにしてみようと思います。

◆その他

◇ハム・ノイズ
計測ノイズが大きくなっても、ホーン開口から聞こえるハム・ノイズに大きな変化はありません。
A,Bアンプ゚単体では、ホーンに耳を当てないと聞こえませんが、FET10パラ・アンプのスイッチを入れると、開口20cm程度で聞こえ始めます。

◇スイッチ・ノイズ
スイッチ・ノイズも、アンプラックで聞く限り、皆無です。
このノイズが聞こえるのは、FET10パラ・アンプが駆動するウーファーのみです。
しかし、一連のスイッチ・ノイズ対策で、以前よりかなり小さくなっています。(聞こえないときもあります。)

◇直流出力電圧
無帰還にしたA、Bの直流出力電圧はmVレベルであり、脅威的な安定度になっています。
この原因は、TLP590Bの負荷抵抗330kΩであることが、2SK1058/2SJ162の温度係数とよくマッチしているからであると思われます。
FET10パラ・アンプも、一段落したら、TLP591Bの負荷抵抗を約50kΩ→330kΩに変更したいと思っています。

◆課題
今しばらく、この音を聞いてみましょう。
そして、FET10パラ・アンプと、中低域用新型アンプ2号の入力インピーダンスを把握し、次のステップを考えてみます。

◆続く

初版 2013.7.10

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