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FET12パラ低域用新型アンプ
FET 12 parallel Low freq new amp
 そもそも、何でディジタル・チャンネル・ディバイダーのタイトルの下にパワーアンプの記事が出て来るのかです。
それは、高能率のホーン・スピーカーとウーファーの能率差を「ディジタル絞り」に頼らずに、パワーアンプの利得で絞ることに原点があります。

アナログ、ディジタルを問わず、チャンネル・ディバイダー・システムで避けて通れないのが各帯域のレベル調整です。
例えば、4wayの場合に、ディジタル絞りに極力頼らないとしたら、先駆者達がやっている8チャンネル・プリアンプの各帯域レベルで調整する方法があります。
筆者のように8〜12ャンネル・アッテネーター使う場合には、パワーアンプのレベルを調整する必要があり、次のような方法を取っています。

1 パワーアンプの入力に付けたボリュームや抵抗分圧で絞る。
2 利得を帰還量を増やして絞る。
3 1,2を組み合わせて絞る。

以下は、ディジタル・チャンネル・ディバイダーを使うのに2年半もかかって得た素人の理屈です。

ディジタル・チャンネル・ディバイダーの入出力の設定を下げる(絞る)と、ディジタル臭い音になります。
特に、高域、中高域で著しくなります。
それならば、ディジタル・チャンネル・ディバイダーのディジタル絞りを行わない状態とは、一体どのレベルなのかです。
ちなみに、DF-55は出力設定12dBが絞らない上限です。
したがって、DF-55の出力を0dBで使っている人がいるとしたら、12dBもディジタル絞りを行っていることになります。

ところが、自然界の音は、エネルギーを一定とすると、信号の強さは-6dB/octの傾斜を持っている計算になります。
このため、低域になればなるほど信号は大きく、録音に余裕がなく、容易にクリップしてしまいます。
CDフォーマットの最大信号レベルは0dBFSとなっていますので、クリップをしないようにしながら、低域は0〜-2dBに目一杯録音されています。

高域は-6dBの延長にある微小信号であり、落雷音でない限り0dBとなることはあり得ません。
こんな微小な信号を12dBも絞って使ってはもったいないことになります。

このディジタル・チャンネル・ディバイダーの実験を重ねて、現在、高域に向けてディジタル絞りを開放することをやっています。
一例では、低域:2dB、中低域5〜5.5dB、中高域:8.5dB、高域:12dBです。

ただし、高域に向けてディジタル絞りを開放出来ても、レベルの段差を付けることは自然界のスペクトルに合致しているのかと言う疑問もなきにしもあらずです。
出来れば、全帯域を+12dBに設定し、クリップしない録音のソースを選べば、これが一番自然な音になるはずです。
恐らく、低音のない静かな音楽になるでしょう。

また、 以上の設定は、CDによっては、クリップの発生するレベルより1〜3dB高い設定になっていますが、瞬間的なクリップに耳は鈍感です。
クリップを赤点灯で示すディジタル・チャンネル・ディバイダーもありますが、クリップの判別は耳に任せ、思い切りデジタル開放を行った方が音はよくなります。

一方、パワーアンプのボリュームで信号を絞ることや帰還を増やすことは音によくないと言われています。
これを、素人風にじつけると、「帰還信号対入力信号比が悪くなる」からであるとなります。

そんなわけで、ディジタル・チャンネル・ディバイダー・システムとパワーアンプの利得は切り離せない話と思われます。

このパワーアンプの見直しを通じて得られた知識は次のようなことです。

1 必要な利得を最初から作りこみ、帰還量は最小にする。
2 パワーアンプの高域側の帯域幅はむやみに広げない。
自然界の音を作り込んだSACDやCDには、せいぜい、20kHz〜30kHzの信号しか記録されていない。
帯域幅が広過ぎると、ノイズや、安定度の観点で有害である。
一方、帯域幅の低い方は、DCまで広げたい。 
3 回路はシンプル・イズ・ベストである。
アース点は一か所しかないほど単純な回路であること。
これを満足するのは新型アンプである。
4 出力インピーダンスはmΩである必要はないが、低域用としては、0.3Ωくらいにしたい。 
5 電流帰還を減らすために、アイドル電流を多く流すか、FETを多数並列接続すると、高順伝達アドミタンスのFETと等価になる。
2SK2955/2SJ554をソース抵抗なしで使うのもそのためである。
確かに音はいい。
6 帰還抵抗を大きくした方が、「帰還信号対入力信号比」がよくなる。
帯域幅も狭まり、外来ノイズに対して安定になる。

こんなことをまえがきにして、さっそく、FET12パラ低音用アンプの製作に取り掛かりましょう。
写真1:ケースの加工に強い味方
スライド式電動鋸 MakitaのLaser line
「穴加工の修正」より

初版 2012.8.28
目次に改定 2012.8.29

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