◆これまでのまとめ
◇コンデンサーのパルス音
これまでの実験を通じて、コンデンサーが出すパルス音は外形が大きなコンデンサー(特に、高耐圧のもの)ほど小さいか、音を出さないことが分かっています。
その点では、200HzのLPFとHPFと中低音、中高音、高音のカップリングに使っている箱形マイカコンデンサーや薄型のマイカペーパーコンデンサーは外形も大きく全く音を出しません。
◇波形の歪み(ゆがみ)
音の実験室/音を出すコンデンサー/積層セラミックコンデンサーの仰け反り波形のまとめのところで、「カップリングコンデンサーは大型の(箱型の)マイカコンデンサーに変更したこと、フィルターコンデンサーもSEコンデンサーや箱形マイカコンデンサーに変更したことは正解だったと思います。」と書きました。
確かに、豆粒大のフィルムコンデンサーからSEコンデンサーや大型の箱形マイカコンデンサー、マイカペーパーコンデンサーに変えたときに、音がよくなりました。
しかし、音を出すコンデンサーの一連の実験で、コンデンサーの立ち上がり波形の歪みに気付き、マイカコンデンサーはパルス音の観点では合格としても、波形の歪みの観点では不合格と思うようになりました。
箱型マイカコンデンサーに変えたことによって、コンデンサーが音を出さないという音質面の(+)はありますが、波形の歪みという(-)もありそうです。
このマイナス分を解決すれば、さらに音がよくなる可能性があります。
すなわち、鋸歯状波の立ち上がり波形に歪み(ゆがみ)があるということは、音声信号にも歪み(ひずみ)を起こしているのではないかということです。
◆中高音のカップリングコンデンサー
◇使ったコンデンサー
写真1-@の高耐圧オイルコンデンサー0.1μF2000V品を使って、今まで使って来た箱形マイカコンデンサー0.2μFと取り替えて見ました。
このコンデンサーは2個しか手持ちがないので、とりあえず0.1μFで音を確認することにしました。
なお、この高耐圧オイルコンデンサーは、パルス音と立ち上がり波形を前項で確認済みで、問題ないことが分かっています。
◇取り付け
この高耐圧のオイルコンデンサーには写真1のように圧着端子を取り付けています。
箱形マイカコンデンサーはネジ端子式なので、ネジで簡単に交換が出来るようにするためです。 |
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写真1:高耐圧オイルコンデンサー
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上から
@0.1μF 2000V(WV)、5000V(TV)
A0.2μF 1200V
B0.1μF 1200V |
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◆試聴結果1
第1印象は、日頃9時半、大きいときでも10時にして聴いているボリュームを11時の位置にしてもうるさい音がしないことでした。
このレベルにして音を聴いたことは今回が初めてのことです。
中高音が美しく歪みが小さくなっていると分かりました。
糠喜びではないかと、次の日にもう一度聴いてみましたが、やはり歪みが少なく音量を上げてもうるさく聴こえません。 |
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試聴に使ったソース |
No |
曲名 |
好きなソース
CD&SACD
参照頁・備考 |
1 |
CD:Ayako Uehara
Live at International
Tchaikovsky Competition」 2002 |
TRITON
DICC-25002 |
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◆中低音のカップリングコンデンサー0.8μF
今までは、マイカペーパーコンデンサー0.2μFを4並列にして使っています。
このコンデンサーもパルス音が出ないと言う点では問題ないのですが、マイカコンデンサーの中でも立ち上がり波形の歪みが2番目に大きいことに気付き、中低域の歪みが気になり始めていました。
◇使ったコンデンサー
中低音の帯域には、高耐圧オイルコンデンサー0.22μF 1000Vを4並列にして使うことにしました。
このコンデンサーはカップリングコンデンサー用として売られていたのが目に付き、失敗も覚悟の上で中低音用として8個買って来たものです。
幸い、前項の測定でもパルス音、波形の歪みの観点でも問題ない結果が出て、ほっとしました。
このシリーズは、上記の他に0.1μFも2個買って来ましたので、高音用にも次のステップで使おうと思っています。
◇ついでに中高音のカップリングコンデンサーにも追加
この高耐圧オイルコンデンサーに交換するついでに、写真1-A、Bの余っている高耐圧オイルコンデンサー0.2μFと0.1μF
1200Vを前記の中高域のカップリングコンデンサーに追加しました。
左側は0.2μF、右側は0.3μFとなりますが、カップリングコンデンサーですから問題ありません。 |
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写真2:高耐圧オイルコンデンサー(新品)
東一電機製 0.22μF 1000V
Non-Inductive Vitamin-Q Oil Paper Cap
(秋葉原の三栄電波鰍ナ購入したもの) |
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◆試聴結果2
第一印象は、中高域の音の美しさです。
ADAGIO・LA QUARTINAのチェロの美しさにまたまた嬉しくなりました。
この他に表のようなCDを聴いてみました。
特長的なことは、中高音がみずみずしい澄んだ音になったことと音量を上げても耳障りな音がしないということです。
改善するたびに何度も同じようなことを言っていますので、ここは「一層」みずみずしい澄んだ音というい言い方が残されていますが、「一層」程度でなく、初めて聴くみずみずしい澄んだ音と言った方がぴったりの表現です。 |
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試聴に使ったソース |
No |
曲名 |
好きなソース
CD&SACD
参照頁・備考 |
1 |
CD:ADAGIO LA QUARTINA |
No10 |
2 |
CD:Cello Cantabile |
No-19 |
3 |
CD:J.S.BACH
Sonatas and Partitas
for Solo Violin Volume1 |
NAXOS
8.55422 |
4 |
CD:DIE KUNST DER FUGE |
No20 |
5 |
CD:Emmanuel Pahud
ブランデンベルク協奏曲 |
No14 |
6 |
CD:アメイジング・グレイス
〜ベスト・オブ・ゲリー・カー〜 |
No3 |
7 |
CD:オンブラ・マイ・フ
ゲリー・カー・プレイズ・オペラ・アリア |
No9 |
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◆まとめ
◇コンデンサーの違い
やはり、これまで使っていたマイカペーパーコンデンサーは音の歪みを起こしていたのではないかと思いました。
また、カップリングコンデンサーとして売られていた上記の高耐圧のコンデンサーが本当にいいコンデンサーなのかも知れません。
本体の表示を見ると「Non Inductive Vitamin-Q Oil Paper Cap TONE FACTORY
TOICHI」となっており、音に配慮したコンデンサーと分かります。
店の話しては、真空管アンプのカップリングコンデンサーとして、好評のコンデンサーとのことです。
42年前にこのコンデンサーがあったなら、6080低RLOTLアンプの不規則な低周波の発振に悩まされることはなかっただろうと思います。
◇期待
これまで、高音用のカップリングコンデンサー0.1μFおよび200HzLPF、HPF用0.1μFにも箱形マイカコンデンサーを使っています。
これだけ音が変わるとなると、これらを高耐圧のオイルコンデンサーに変えると更に音が改善されるのではないかという期待が膨らみます。
◆課題
◇数kHzの鋸歯状波形の歪み
立ち上がり波形に歪みがあるというのは、コンデンサーの内部に高抵抗の電池やコンデンサーが出来ているためと想像しています。
一連の波形観測の周波数は10〜25Hzと低いのでこの影響を受けるわけです。
もし、この説が正しければ、高周波では波形の歪みは無視できるのではないかと思われます。
周波数を5kHz〜20kHzにして、コンデンサーの鋸歯状波形をスイープして、波形の歪みを観察してみれば分かるはずです。
◇パルス音に関しては、積層セラミックコンデンサーが一番大きい音を出します。
おまけに、静電容量の電圧依存性があり、鋸歯状波形に仰け反りがあります。
積層セラミックコンデンサーはデカップリングコンデンサーに使用しており、一定電圧で使う応用なので問題はなさそうということと、音もいいと評価していますが、以前から静電容量の電圧依存性の点から気にしているコンデンサーです。
アンプの音の経年変化/プリアンプのデカップリングコンデンサーの強化のところでも、「歪みの要因を持ったものを使うと、例えわずかな問題であってもこういうことが起こりますから、出来るだけ使わない方がよさそうです。」と書いています。
ここは同時並行でなくて、まとめや課題に書いたことが一段落してから、積層セラミックコンデンサーの再検討に入ることにします。
◆続く |